2009年02月03日

尾辻質問から考える… 自民党は「野党」になっても魅力を持てるか

日本医師会向けのパフォーマンスという面はある。しかし、この質問から考えさせられる点は多い。

自民・尾辻氏 「下野覚悟で!」首相に迫る

jimin_otsuji_20090130.jpg(C)毎日新聞

 「経営者の視点で改革が進められ、多くの人を失業に追い込んだ。(政府の)規制改革会議は責任をとらなければならない」。30日の参院代表質問で、自民党の尾辻秀久参院議員会長が、野党のような辛口の政府批判を連発し、構造改革路線と明確に決別するよう麻生太郎首相に迫った。

 尾辻氏は規制改革会議と経済財政諮問会議の廃止を迫った後、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制する政府方針も攻撃。「『できません』と素直に言えばいいのに、つじつま合わせで訳が分からないことを言っている」と切って捨て、「乾いたタオルを絞っても、もう水は出ない」と撤回を呼びかけた。

 さらに「野に下るのは恥ずかしくない。恥ずべきは政権にあらんとして、いたずらに迎合すること。毅然(きぜん)と進む首相にご一緒します」と、首相に「下野の覚悟」まで説いた。

 だが首相は「諮問会議などは政策の調査、審議で大きな貢献をしてきた」などとそっけない答弁に終始した。

 質問後、尾辻氏は記者団に「もう少し正面から答えてほしかった」と表情はさえなかった。【野口武則】

(1月31日、毎日新聞)

先月(1月)30日の参院本会議で、麻生太郎首相の施政方針演説に対する自民党・尾辻秀久参院議員会長の代表質問が行われた。
尾辻氏は、「政府の経済財政諮問会議が唱えてきた市場原理主義は間違いだった。規制改革会議も、多くの人を失業に追い込んだ。両会議を廃止すべきだ」と述べ、構造改革路線の全否定を求めた。
「首相! 野に下ることは恥ずかしいことではない」と下野のすすめまで説いたため、野党席からは喝采が起きた。

閣僚席で尾辻氏の代表質問を聞いていた麻生首相は、困惑顔を隠すことができなかった。
「今後とも経済財政諮問会議などでわが国が直面する課題の克服に向け精力的に審議する。内閣の最終的な政策決定は閣議で行う」と回答するのが精一杯だった。
本会議後、民主党の簗瀬進参院国対委員長は「尾辻氏は大変果敢だ。自民党は完全に自己分裂状況に陥った」と絶賛。国民新党の亀井久興幹事長も「自民党内でもそういう考えの人がだんだん増えている」などとべた褒めした。

一方、自民党内からは反発の声が上がった。
安部晋三元首相は講演で「小泉以前に戻そうとする動きは阻止しなければならない」と強調。
山本一太参院議員も「構造改革路線を全部ひっくり返すのは乱暴だ」などと述べた。

尾辻氏は1940年、鹿児島県生まれ。
一度は防衛大学校に入学するが、母の死去により家族を支えるため大学を中退し、仕事を始める。その後、改めて東京大学に入学するが、在学中に海外を放浪し、結局こちらも中退する。
帰国後はルポライターとして活動し、著作が第1回大宅賞にノミネートされたこともあった。
1979年、鹿児島県議会議員選挙に当選。1986年、旧鹿児島1区から衆院選に出馬するが、落選。1989年の参院選比例代表で初当選した。

2004年、第2次小泉純一郎内閣で厚労相に任命され、がん対策に力を入れる。在任中の2005年に「がん対策情報センター」予算の骨格が決まった。
2005年、参院予算院長に就任。2007年の参院選で自民党が敗北したことを受け、青木幹夫参院議員会長(当時)が責任を取り役職を辞任。後任の参院議員会長に就任する。
自民党「患者中心のがん医療を推進する議員の会」会長を務め、2006年に成立したがん対策基本法の制定に尽力した。
昨年(2008年)1月には、がん闘病の末、2007年12月に死去した民主党の山本孝史参院議員の追悼演説を、参院本会議で涙ながらに行う。山本氏は民主党における同法の推進役だった。
現在は、超党派の議員立法に関わることが多い。
医療・福祉関連の政策立案能力、嘘をつかない性格や人柄は高い評価を受けているが、お世辞にも「政局に強い」政治家とは言いがたく、参院議員会長に尾辻氏が就任しても、参院自民党の影響力はさらに低下するだけだ、との意見も存在した。

――尾辻氏が30日に行った代表演説は、内容、口調ともにさながら野党議員による代表質問のようであった。
実は、麻生首相と尾辻氏のあいだには、過去にも一度“いさかい”があった。
昨年11月に麻生首相が講演で「医師は社会的常識が欠落している人が多い」と発言、物議を醸したが、この直後の自民党会議で尾辻氏は「医師会の推薦はいらないっていうんだな」と同僚議員を恫喝したのだ。
その後麻生首相は謝罪したが、自民党の支持団体・日本医師会と自民党の関係はさらに悪化した。
「厚労族」であり、日本医師会に近い尾辻氏としては、今回の代表質問で麻生首相に対して厳しい物言いをすることで、日本医師会に向けてパフォーマンスをする狙いがあったといえよう。

しかし、尾辻氏が指摘した点は、実はとても大事な点でもある。「政権政党」の座を保持し続けるがために存在する、今日の自民党の在り方に疑問符を呈したからだ。
自民党が政権政党であること、すなわち与党であることに最重要の意義を求めてきたことは、過去にこのブログでも多く言及してきた。
「55年体制」で生まれた自民党が結党直後、最大に担った使命は日本を反共化することであったが、米ソ冷戦の終結により「反共化」という最大の使命が持つ意味合いは薄くなる。そして、1993年の非自民政権誕生により、「55年体制」は事実上崩壊。
今日における自民党政権の最大の使命は、与党であり続けることであり、「政権を獲って何をするか」という本来の目的性は失われつつあると言わざるを得ない。「政権与党になる」という手段が目的と化しているのだ。

私個人の意見としては、民主党に政権を担わせたい気持ちは微塵たりともない。「一度、民主党に政権を担わせてみたら」という思考停止に陥った考え方をすることもできない。
しかし、現状を客観的に分析すれば、自民党が野党に転落し、民主党政権が誕生する可能性は極めて高い。民主党に政権の座が回ることは避けられない事態といえよう。

だからこそ、自民党にとって今大事なのは政権を死守することではなく、「自民党らしさ」を打ち出すことなのではないか。民主党には打ち出すことが不可能なような「自民党らしさ」を打ち出すことで、ネガティブに政権政党の座にしがみつくのではなく、ポジティブに政権政党の座を狙いに行くことが大事なのではないか。
それは旧来の懐古的な自民党像を打ち崩し、21世紀型の若いエネルギーあふれる自民党像を創り出すことにもつながる。日本の政治に新風を巻き起こすためには、自民党が一度下野することは決してムダなことではない。それだけのリスクを負うだけの価値はあるはずだ。

日本の政治システムが「内閣」「与党」「野党」などと簡単に分類できないのは、一つに自民党の持つ特性ゆえである。党内派閥間の争いによる「擬似政権交代」。「族議員」による政官連動。そして、これらの要素により続いた「1と2分の1政党制」。
1993年の細川護煕政権誕生は、自民党にとって、政権与党の座に安住し続けた“ツケ”を払わせられたかのように思えた。2009年、「ねじれ国会」の下で迎える総選挙を控え、自民党は再びこの“ツケ”を払わされようとしている。

2005年の「郵政総選挙」で自民党は新たに生まれ変わったわけではなかった――。こう考える有権者たちによる“反乱”が、積極的ではないにせよ民主党政権誕生へ歴史のコマを進めている。
自民党は今度こそ本当に生まれ変わらなければならない。「派閥」「族議員」などのシステムは必ずしも善悪の基準で判断できるものではなく、よい面もあれば悪い面もある。
しかし、いかにせよ旧来の在り方は21世紀には通用しないことはたしかだ。自民党は野党に転落してでも、訴えたい何かを持つことができるか。「野党・自民党」としての魅力を発揮することができるか。
自民党も民主党も、国会で「政治ごっこ」をやっている場合ではない。


<リンク>
尾辻氏の代表質問全文(2009年1月30日) その1 その2
尾辻氏による山本氏への追悼演説
追悼演説動画 前半 後半

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
posted by Author at 21:30| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | 政治・政局 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/113629692

この記事へのトラックバック

景気回復は日本の責務by阿呆太郎
Excerpt: 景気回復「日本の責務」=世界経済の危機克服に決意−麻生首相、ダボス会議で講演 麻生太郎首相は31日昼(日本時間同日夜)、スイス東部のダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席..
Weblog: zara's voice recorder
Tracked: 2009-02-03 22:12

[民主主義・選挙][政治・議会・立法]とてつもない政治家達 その2 尾辻秀久 参議院議員
Excerpt:  前回の後藤田議員に続き、今回は自民党の尾辻議員です。後藤田議員は小型麻生と評される、はちゃめちゃ坊っちゃん議員で、自民党でも珍しい浮いた存在なのですが、尾辻議員の場合は、良くも悪くも従来型の自民党..
Weblog: 精一杯の○○○
Tracked: 2009-02-28 16:27
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。